まだ えぞをの書き残した病床のノートが読めない。

今日は息子夫婦に三七日(みなぬか)のお父さんを守っていて貰い
おし花へ・・ それが 約束でしたから・・

カメラと私の手が写り込んでしまいスミマセン。
Eさんは 今月で6回目のレッスンです。 綺麗な色使いですね。

    Dさん2


   ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


えぞをの詩は すみれの結婚に際しても書かれ 
彼女たちへプレゼントされた。

その詩を  俳句の代わりに書きとめて置こうと・・思う。

   ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

         やさしき光芒の前を    えぞを

鞭よりしなやかで 吹子より激しい時を歩いて来た
幾世代の求めて来たものは
 朝露にぬれた花野 瀝青に埋もれた器片(うつわ)
令嗣に充ちた泉でも 豊穣でもない
 手に掬っても掬っても形を見せぬもの

おだやかな時の流れの裡に激情が奔り 雷鳴が樹冠を裂き
疑心が心の切れ目に殺到するうつつの間 それさえも過去になる
 夜明け 静かな水面に河骨(こうほね)の花やオオスガ蓮の大輪が揺れ
宇宙から照射されるやさしい光芒が行き渡る
 思えば私たちはこの光芒の中から生まれ 光芒の中を歩み
生きている一瞬一瞬のよろこびに溢れ 未来へ身を乗り出して歩いて来たのです

むかし雑草は腑に落ちないほど早く伸び 
 地軸を探し廻る少年と少女は泥にまみれ
あの時少年は未来を占って居た 
 花壇からはなびらをむしって地に撒き散らし
 あの日から少女は魔女になって樹にのぼり 見えなくなる

えんどうの花に昼月(つき)の雫をこぼし 少女から
 パパ ママへの贈り物

ときどき海の見える畑でトマトをかじり キュウリをかじり
 青虫を育てた季節

   むかしも今も私たちは探す
   日向の天安河原の アカネスミレ
   天岩戸の タチツボスミレ
   出雲の国の スミレサイシン
   美保関のサクラサイシンは 花びらがサクラに似ているから
   長沼の水芭蕉のとなりに咲いた青いスミレ
   赤岳の タカネキスミレと ジンヨウキスミレ
   何しろスミレは私たちの大切な花

少しむかし ここから先は末世ですからと山子がいう
倒れた杉の木をまたいで垂直に崖を滑り降り
 訪ねた無人のふるさと
 卯根倉には もう一本の道もない
 虹の立つ余地さえない峡(かい)の照り降りなのに
 廃墟の中から一閃のまなざしが私たちをつらぬいて走る
その確かなるなつかしさ 
幾世紀の集落を支え離合を導き
 いまも生きている過去のいのちの気配
過去は現実に溶け さらに過去は未来へひるがえった
 その確かな証としてけなげな子供が生まれ
私たちは子供の背中に希望をたくす
幾世代求め続け 見え隠れする愛の分身

 イヌが好き ネコが好き 海が好き
 雪が好き こどもが好き

目隠しされたブロックの街でも マッチ一本の明かりの中でさえも
 お互いの眼に希望が見え やさしさを感ずるなら
あなた方は
 もう未来の中に居るのです
                           1999年 3月 21日

     ー家族新聞 海見えて NO 20よりー



 2016_04_02




二七日です。

苦しい中でも  手放さなかったノートと 鉛筆。

きっとその中に 俳句が書いてあるに違いないのですが
まだ ページを開くことが出来ません。

六花がえぞをの作品の中でこの詩が一番と思って居る詩があります。

今となっては掲載許可もとれません。
この詩は 並樹とN子さんの結婚式・・入場式に朗読されて
二人は入場してきたのでした。

詩・・えぞを
朗読・・六花

音楽
ヴァイオリン・子守唄 (フォーレ)
同上      愛の喜び (クライスラー)


          美しい朝

  新しい命に何のためらいがあろう
  彼も彼女も両腕をふるわせ 大きな声でこの世に生まれてきた
  1964年
  初冬の雪の小片が透き通るガラスの表面を滑って窓枠に舞う
  朝が始まる この温かい息づかいの部屋から地上のすべてのものに
  静かな意志がひろがっていく

  思惟をさえぎる峰々と沖へ導く思慕のディスタンス
  灯台光に見守られて(まもられて)彼も彼女も育った
  石炭ストーブの家では
  煙突から煙が海へ飛んで行く
  追いかけて行く心が トランスポートの貨物船と出合う
  それから迷子になるほど遠い日々
  親の生涯でいちばん嬉しかった其の日 わが子が生まれた
  その日
  春は虹の下へ乳母車を押し出し
  夏は裸足で渚を跳ね
  秋はいっそう寡黙な家族となった
  冬は北風の旗となって丘に登り
  夜は暗黒のしじまに祈った
  ふたたび平凡な朝が来るだろうかー

  時はどんどん過ぎていった
  追い越すことも追い返すこともできない季節が流れ
  無辺な大玻璃の僅かな痕跡に過ぎない私たちの
  その存在を示す100冊のアルバムがある
  今も語り続ける過去と未来のー

  花を摘んではいけない 心が乱れるから
  犬の眼を打ってはいけない 人間と(ひとと)同じ哀しみを
  持つから
  森の死角に入りシギの警告を聞くが良い
  沼へ行ってせめぎ合う水の掟を教わるがよい
  おびえるものに 夜半の電話と虎落笛(もがりぶえ)
  魚になろうよ 虎になろうよ 海の野原で

  男の子は崖から飛んでスーパーマンを夢見た
  女の子は木によじ登り魔女を気取った

  日曜の庭に桃の木を植え 祭りの街を探して歩き
  思い出すさえむずかしく
  それからも時が熟しつづけた  熱い刻がー
  やがて勁い(つよい)掲示が忘我の砂丘から起ちあがり
  彼らは幾千万年の光芒をたどる因子となり
  いま 妻に選んだ相手と
  いま 夫に選ばれた自分のために
  たがいに指ふれ合い 用意された街角を曲がる

  昨日 スーパーマンになれなかった男の子は
  昨日 魔女になれなかった女の子は
  地軸が傾く地平の点の
  カギっ子の町 蝌蚪の町にとまどいながら
  校庭の隅にたくさんの言葉を植え
  コールサインやクレヨンで物語を綴り始める
  タキシードと白いドレスで出かける道のなんという陽気な遙けさ
  若い二人は傲然と肩肘張って行くがよい
  若いから愚かしさも許されよう
  けものにけものの徑があるように
  彼らに彼らの舞台があって オーケストラがある

  語ろうよ
  昨日の拍手と きょうの拍手について
  昨日の微笑みと きょうの微笑みについて
  これまでの愛と これからの愛について
  その とりとめもなく すてきな愛ー
  ささやかな愛について

  一九九二年
  いま 妻に選んだ相手と
  いま 夫に選んだ相手と
  たがいに指ふれ合い 用意された街角を曲がる

          (一九九二・九・六) えぞを   
    


  美しい朝1

  美しい朝2

  家族新聞・・海見えて・・NO11 より  1992年11月15日発行
 2016_03_26



札幌で えぞをと五十五年前再会をした。
その年のクリスマスプレゼントを まだ持っている。

53年前

あれからクリスマスは 子どもたちを秘かにだますゲームになり
小児病棟の感動的なクリスマスの夜を過ごし
時代は流れて 私たちと同じ事をして・・両親から騙される孫たちに
微笑んだ。


           サッポロは秋

      ひかりを洗い落とし
      いよいよ彫りを深くする街
      流れに沿って冷たいベンチの上
      ためらうエラの呼吸は
      あなたは一匹の魚
      こんなにもやさしく腕の中で
      のびやかに脚をのばす

      花時計がひたいを埋める露のカーペットに
      昼の誠実と交替した愛が
      時計塔がささやく
      ほしいものを早くお取り

      目を閉じて行くもくれんの花
      くずおれやすいあなたのヴァーチェ
       かしこいあなたは
      落ち葉の裾をひらり逃れて
      鍵の迷路へ誘うのですか
      サッポロのエコーの森・指の森

      忘れ物をしたのは季節です
      馭者たちへ長い手紙を書きましょう
      北国の空は針が落ちる音です
      もう帰らなければならない時刻です
      エルムの広場で孤独を抱く者
      バリトンが去りかける
      JOHR JOHR
      ごきげんよう

      あなたは微笑って 鍵をとり出し
      立木のひとつに入ります


              えぞを詩集ー約束ーより

あれからえぞをは 折に触れ 詩や短歌そして俳句を作った。
その才能を尊敬し、言葉の魔術師のようだなぁ~と思って居た。
もっともっと言葉を紡いで貰いたかった。
 2016_03_23



ほんとうの春なのだろうか?
どうして雪の無い三月なのだろう。 このあと腰までぬかるような
この地域特有の 「どか雪」に見舞われるのだろうか?

キタミフクジュソウ

えぞをは車から降りられなくなっていても 「お財布忘れたー」
「お財布に千円しか入ってなかったわ~」という六花のために
いつも小銭入れを用意していた。

小銭入れには 15000円が入っていた。 車の中の小さなポケットにも
病院へ携帯するカード入れにも・・アチコチから3000円、5000円と
出てくる。
そして今日は あちこちの温泉の回数券が入っている袋からも出て来た。  
胸を突かれるような思いの中でとうとう声を上げて泣いてしまった。

自分はとうの昔に 温泉に入れなくなっていた。
六花が温泉に入っている間 車の中で俳句を作ったりして待っていた。

これからどうやって生きて行けばいいの?・・・

                      
             北の旅

      押し出される先から
      いさぎよく落伍するためのデッキに
      端正な辞儀と帽子のために
      駅がまばらな人と決別すると
      はやくも霧が瞳孔におし拡がり
      野っ原に牛乳(ちち)の匂いを嗅ぐのだ

      歯朶叢をつらぬき
      先行する思考 河口で始まったのは行く手に未知
      があるという信仰だ

      森の蝶をそよがせ
      白亜の河床を裁って進み
      散開して行き指開く火山灰地(よなち)の枯れ木
      その末端から傾いて行く地平を
      渡り鳥と村人とが横ぎって行った

      熟れすぎた乳母の胸から
      太陽の庇からつんのめって落ちた鳥影に
      手を振り 西へ手を振ろう
      車軸が露に冷えきると
      夜は愛の目でいる奴
      最寄りから指を算えはじめ
      赤児の前で釘づけになる
      もろいものから予感がはじまり
      恐怖がひろがりはじめる

      何故我々は抱き合うのか
      みんな肉が血を流した痛い記憶だ
      すべての光明に背を向けても
      愛し愛し続けていたのに
      そのディスタンスのはるかな一端に
      銀河が回転している

      背を折り曲げてやさしい人
      椅子に抱かれたいとし児よ
      窓の外を失意の時が追走している
      網棚の上の唄わぬ帽子
      シートの下の秋の花束
      それら総てに関わりなく
      途方もなく北上する汽車は律儀にさみしい
      地に停まる

      目的は進行するということ
      不毛の意識に泉の匂いを炊き込めるということ
      野ざらしになるということ
      古い地図うけついだ者はランプの中にとらわれ
      家系にたてこもりそこで睡り
      しかも生まれた時からかたくなであった者には
      別れすらない

      ひたいを火に灼き鉄に意志を与えし者のすえにして
      それらのかたみに灯と介在を厭い旅行く者
      すべての智恵と感覚をねむらせ
      誇りをのみ目覚めさせ
      さびしさつのり来ても不遜をよそおい
      不滅の顔をよそおうことを誓おう

      夜を駆ける汽車は方向そのものであった
      めざす北の方角では早くも雷鳴が始まって
      いるように思える

 2016_03_22




二人合わせて一人の分の健康しか持ち合わせていなかった。
姑も小姑も 六花との結婚に反対であったと
結婚して直ぐ分かった。無理も無い。

えぞをは 「シンプルに生きよう」と言う。それがやくそくだった。
何か問題が起きると・・我々はシンプルに生きるへ立ち返っていた。
なるほど えぞをは 平均寿命を生ききった。


詩集


                   約束

          ラデンの森からアデノイドに沁みるさむさが去り
          毛皮にうずもれた麻酔のねむりからあかい月が飛び出し
          ボクのすきなウルフなんかナミダながして
          それから
          まじめでいるボクとモモをぬすんだオマエと
          木株に腰かけていて
          だれにも逢わないでいた

          まんぞくしている時は自分を考えないで
          食べることを考えないで何もしないでどこへも行かないで
          オマエは毛糸を編んでいる
          昔からそうだったろうか二人は
          足元の泉の底からよびかけてくるパパの呪文は
          ボク  ボク  ボク  ・・・・・・・
          ボクはゆさぶられていた
          ぐんぐん伸びどおしの杉の幹に生まれたコダマたち
          ひとつずつこたえ合って谷に落ち
          ママンを探している
          地獄へ落ちたママン

          小さい女はいじわるでちいさい男はいたづらずきで
          わるい奴とわるい奴とふざけているとへんにすきになる
          お金なんかなく
          すてるものもなく
          森は完ぺきなんだ
          と言ったら旅の人がわらったが
          あの人のケロイドはすごいねとオマエはあおざめて あおざめて

          ミミズクが病気になってから永遠が流れだした小川に
          手を取り合って踊っている木立に
          くるおしい月がかかるとおんなは魔術にかかり
          ふいに泣いたりボクをこばんだりかくれたりするが
          夜はどうして変なのか
          つかまえても押さえても腕の間からにげていくタマシイ
          タマシイはホタルが好くから
          ホタルが  円陣でとんできた

          森に番人がいる
          黒いカギ束で夜のトビラを開け
          ゆうべのワナをとりのぞき
          パンから生まれた蜜蜂に
          朝のパンくずをはねとばす
          オマエはしゃべりはじめる
          モモがけさは熟れたから

          モモの木の下は祈りの場所で
          ひるねの場所もモモの木の下
          オマエもボクも夢を見る
          もうウソをつきませんといって
          ナミダながしていて
          本気であやまったのだろうか

          オマエの愛がボクへの愛より強いものだとしても
          ボクの敵がちょっぴりオマエであるとしても
          森の平和をみだす口実にはなりません
          出逢ったとき山羊が教えた約束です 
    


3/20日したこと
 電話の名義変更・・死亡届と 戸籍抄本が必要。
 だんだんまわりから えぞをの名前が消えていく。
 その分の重みが 六花のこころに沈静していく・・
 寂聴さんが 夕べテレビで話していました。
 「死んでも この世で愛した人の側にいます。」
 「いずれみな死ぬんです。 また会えます」 何と言う恩寵だろう。           
 2016_03_21




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プロフィール

Author:六花
一人でも 楽しく生きて行こう。
心の中にパートナーが
いるのだから・・

いらっしゃいませ

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